Zenism(禅)
禅という言葉は世界共通語になっています。発祥は中国ですが、禅の本場は日本とみなされています。禅問答にみられるように、論理的で哲学的な考え方をします。また、座禅を基本とした、瞑想の実践が有名です。この瞑想が全世界的に流行しているそうです。瞑想は、英語でmeditationと言います。禅の瞑想は有名ですが、多くの宗教で行われています。そのため、瞑想には宗教的な印象があります。しかしながら、ヨガのように宗教から少し距離を置いた瞑想のスタイルもあります。
僕が通った高校は仏教系でした。中でも密教に分類される宗派でした。密教というのは、昔は小乗仏教と呼ばれたグループです。修行の末に救済されると考えています。その修行の一つに瞑想があります。ということで、僕の高校では、瞑想の授業がありました。
瞑想は、週に一度、宗教の時間に行われました。仏教系の学校なので、ブッダの話を勉強しました。でも宗教の先生は、かなりリベラルな人でしたので、イスラム教やキリスト教、ヒンズー教など、世界の主だった宗教をかなりみっちり学習しました。その時の知識は、世界史や世界情勢を理解するのにとても役立っています。宗教を軸に世界を眺めると、いろいろなことを理解することができます。この話は、別の機会にみっちり考えたいと思います。そういう宗教の勉強と並行して、授業時間の半分は瞑想の実践でした。
Meditation(瞑想)
禅にみられるように、瞑想と宗教はとても深いつながりがあります。でも宗教の先生はとてもリベラルなので、瞑想と宗教を切り離す指導をしました。というのも、その高校に通う生徒の中にはキリスト教徒もいましたし、もしかしたらイスラム教徒もいたかもしれません。キリスト教の一部、イスラム教の多くは、他の宗教の活動に参加することを禁じています。そういうの宗教を原理主義って呼びます。宗教の先生はそういう生徒の事情をよく理解しているので、瞑想と宗教を切り離すことで、事情のある生徒が授業に参加できる環境を作りたかったのだと思います。今から考えても、とても賢明で先進的だと思います。さて、通常は瞑想と深く結び付いている宗教の部分を排除してまで瞑想を指導する意味はどこにあったのでしょう。それこそ、今、瞑想が世界で注目されている理由です。瞑想の効能は、リラックス、ストレス解消などが指摘されています。しかし、それは本質ではないと僕は思います。瞑想の最大の効能は、血行のコントロールです。血液循環が良くなって、疲れが取れ、リラックスでき、ストレスが解消します。
僕は高校卒業後も月に一度くらいは瞑想をしています。主な目的は肩こりの解消です。肩こりは肩周辺の筋肉の血行不良なので、瞑想でそのあたりの血行を促進すれば、一晩で肩こりが治ります。
ただ、そういった効果を得るためには、ちょっとした訓練が必要です。まず僕が考える瞑想の間違った常識を挙げることにします。
- 「頭空っぽ」は嘘。よく、瞑想する際は、「頭を空っぽにする」なんて話を聞きますが、それは間違っています。瞑想する際は、神経を集中して自分の体の各部を「感じる」努力をします。また、呼吸をきっちり制御しなければなりません。何も考えず、自然に呼吸するだけだと、瞑想の効果はほとんどありません。
- 手のひらを組み合わせ、親指を向かい合わせて丸い「印」を結ぶ、必要はありません。
- 姿勢を正して座る、必要はありません。瞑想するために特定の姿勢はありません。ただ、長時間じっとしていられる姿勢である必要はあります。
Practice(実践)
僕の瞑想スタイルを紹介します。僕は瞑想を夜にベッドの中で行います。ベッドの中なので、仰向けに寝た姿勢になります。枕の位置と高さを調整し、首に負担がかからないようにします。全身の力を抜いていきます。腕、足などの負荷が左右均等になるようにします。背中やお尻なども最も負荷が小さく自然なバランスになる位置を探します。
瞑想を座って行う場合も、基本的に同じ考え方で姿勢を決めます。座っている場合、背筋が鉛直で重心が体の中心をとおるとき、姿勢が最も安定します。なので、座位で安定な姿勢を追及すると、姿勢正しく座ることになります。通常の瞑想は床に座布団を引いて行いますが、椅子に腰かけた状態でも、安定な姿勢が得られれば、問題ありません。
姿勢が決まったら、瞑想用の呼吸を開始します。多くの瞑想スタイルで、腹式呼吸が良いとされています。深く呼吸し、回数を減らすことが大事です。胸で呼吸すると体が大きく動くので姿勢が崩れやすくなります。そのため、腹式呼吸がおすすめです。しかし、腹式呼吸だと息苦しいという人もいるでしょう。その場合には、腹式呼吸にこだわらなくてよいと思います。
瞑想のための呼吸では、息を吸ったあとに、しばらく息を止めることが大事です。息を止めると、脈拍が早くなります。これは自律神経で制御されています。ということは、息を止めるだけで、自律神経を刺激して活発化する効果があります。
息を止めると、血圧が上がります。脈も速くなっているので、血流量が増えます。息を止める際、空気をおへそのあたり(丹田)に押し込むようにすると、効果的です。丹田に力が入ると、肺に圧力がかかるので、酸素取り込み効率が上がります。血流量の増加と相まって、代謝を高める効果が大きくなります。
瞑想が安定してくると、呼吸数が著しく減少します。1分間に4~5回が目安ですが、慣れてくると、もっと減ってきます。血圧と脈拍が落ちないので、正しい瞑想では眠くなりません。
息を止めると、血圧が上がります。脈も速くなっているので、血流量が増えます。息を止める際、空気をおへそのあたり(丹田)に押し込むようにすると、効果的です。丹田に力が入ると、肺に圧力がかかるので、酸素取り込み効率が上がります。血流量の増加と相まって、代謝を高める効果が大きくなります。
瞑想が安定してくると、呼吸数が著しく減少します。1分間に4~5回が目安ですが、慣れてくると、もっと減ってきます。血圧と脈拍が落ちないので、正しい瞑想では眠くなりません。
呼吸が整って来たら、目を閉じて、自分の体の感覚を探します。姿勢が完全には安定していないと思うので、体重の負荷のバランスに集中すると良いかもしれません。バランスが悪い場合は、体を動かして微調整します。繰り返してゆくと、外界からの感覚がどんどん消えてゆきます。
外界からの感覚が消えると、体の内部の感覚が得られるようになります。普段は意識しませんが、瞑想で外界からの入力を絶つと、体内にかすかな刺激があるのを見つけられるようになります。体内からの刺激はとても弱いので、外界からのノイズがあると気づかないのです。
瞑想では特に、心臓の鼓動を探します。心臓は胸の中なので、胸の中に鼓動の感覚を見つけられる場合も多いのですが、しばしば首のあたりに見つかります。頸動脈ですね。心臓は体内深くにあるので、感覚神経から遠く、見つけにくいのです。感覚神経の多い体表近くでもっとも太い血管が頸動脈なので、首の前あたりに脈動を感じることが多いのだと思います。
瞑想では特に、心臓の鼓動を探します。心臓は胸の中なので、胸の中に鼓動の感覚を見つけられる場合も多いのですが、しばしば首のあたりに見つかります。頸動脈ですね。心臓は体内深くにあるので、感覚神経から遠く、見つけにくいのです。感覚神経の多い体表近くでもっとも太い血管が頸動脈なので、首の前あたりに脈動を感じることが多いのだと思います。
脈動が見つかったら、脈動の周期に神経を集中し、同じように脈動している場所を探ってゆきます。首に脈動を見つけたら、まずは、心臓を探します。心臓が見つかったら、脈動をたどって首、肩、腕、手のように体の先の方に脈動をたどってゆきます。このとき、意識している場所の血流量が増加します。例えば、脈動を手のひらで維持すると、手のひらがポカポカしてきます。なので、肩こりを解消したかったら、こりのある肩の場所で脈動を感じ続けます。しばらく続けた後、呼吸の制御を辞めれば、血圧が下がり、睡眠に移行します。次の日には肩こりが解消しているという仕組みです。
冬の寒い時期、足先が冷えて寝付けないことが多いのですが、その時は、足先に脈動を移動させます。すると足先ポカポカになって、すっきり寝ることができます。ただ、不思議なのは、足先がポカポカする代わりに、僕の場合はふくらはぎが冷えます。冷たい血液が移動する感じです。おそらくですが、足先の血管が広がっても、ふくらはぎの血管は収縮したままで、熱交換が進まないのだと思っています。
以上をまとめると、瞑想では、
①呼吸によって脈拍・血圧を上げ、代謝を向上させる。
②外界からの刺激を裁ち、体内の感覚を研ぎ澄ます。
③体内の感覚を制御することで、血行を制御する。
という3つの段階を踏むことで効果を上げることができます。
僕の場合、瞑想の時間は、主観で15~30分です。「主観」と断ったのは、瞑想時の時間間隔は実時間とのずれが大きいことが多いからです。
Therapy(治療)
瞑想は脳内麻薬と呼ばれることもあるエンドルフィンの分泌を増やすという噂があります。僕はドラッグをやらないので、瞑想の際に、麻薬的な効果があるのかどうかわかりません。頭がすっきりするかというと、微妙です。全体的に血行が良くなるので、体全体がすっきりします。そのすっきり感が麻薬的かどうかというと、それはないと思います。僕の体験では、瞑想の効果は、血行の促進に集約でき、脳への影響ははっきりしません。だから、ストレスという脳の疲労が解消するのは、体の疲労が解消するからだと考えています。
しかし、脳の疲労が直接解消する可能性もあります。解釈としてあり得るのは、外界からの感覚を遮断するという行為の影響です。正しく瞑想すると体験できますが、我々は日常的に膨大な量の刺激を受け続けています。脳は休む暇がないでしょう。瞑想ではそういう刺激を一時的に取り除きます。脳は休憩できるかもしれません。すると、ストレス解消につながるでしょう。でも、瞑想の時間は長くないので、短い休憩がどれほどの効果を生むのかと考えると、その効果は懐疑的にならざるを得ません。
ここで紹介したように、瞑想は宗教とは別物です。高校のときの先生はとても先進的だったと思います。こうして宗教と切り離された瞑想が現在世界中で流行しています。多くは呼吸法までですが、体内感覚の制御まで進むと、ずっと効果的だと思います。
今流行の瞑想では、脳の機能向上がうたわれています。スティーブジョブスが晩年、瞑想にはまっていたことのが知られており、瞑想がジョブスのアイデアの源泉だという人もいます。僕は懐疑的ですが、ちょっとはそういうものがあるかもしれません。