2017年5月25日木曜日

ツーマンセルを基本にする

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週休4日はハードルが高い

僕は何年も前から週休4日で、副業を持つという働き方が良いと思っています。そのことについては、「週休4日のすすめ」に書きました。でも、それって、組織の理解とか社会制度とかいろいろクリアしないといけない課題が多くて、なかなか踏み切れません。
そこで、折衷案として、すべての業務をツーマンセルにして、所属を2重にするというのを最近提案しています。週5での勤務のうち、3日弱はメインの職場、2日強は別の職場で別の業務をするというやり方です。一人の人は週3でしか関われないので、業務に支障をきたしますが、それは同じような事情を持つ別の人が補います。結局、すべての業務の担当者が2名ずつ(ツーマンセル)で、日毎に交代するというわけです。実質的にメインの業務は週休4日で、サブ業務が副業になります。これだと、組織内の取り決めだけで、実質的な週休4日制を実現できます。

ツーマンセルのメリット

週休4日制のメリットをおさらいしておきます。

  1. 常に交代要員が確保されているので、休みを取りやすい。
  2. 最低限の収入を確保しつつ別のこと(起業やボランティアなど)にチャレンジできる。
  3. 子育てや介護などに参加しやすい。
  4. 複数の職場を比較できるので、業務改善が進みやすい。
  5. 新たな職能の発見につながる。
  6. 転職が促進され、人材が流動化する。
  7. 引継ぎが必要ないので、人事異動が容易。
  8. 専門的な職能を持つ人材を、市場調達しやすい。
  9. 一時的な雇用調整が容易。

ツーマンセル型でもこれらのメリットのほとんどは継承されます。ただし、転職は促進されません。その結果、人材が流動化しないので、人材の市場調達は従来のままです。雇用調整として、メイン業務のみとすれば、それはワークシェアリングそのものです。
でも、そもそも社会の理解が必須な週休4日制を、会社の理解だけで先行導入するというのがツーマンセル型なので、社会へのインパクトが最小限にとどまるのは仕方がないことです。そう考えると、ツーマンセルによって、週休4日制のメリットを現状制度の限度いっぱいまで享受できると期待できるわけです。

いくつかの会社の人に提案してみた

僕は、いろんな会社の人と話す機会があります。ほとんどは、研究の末端の方なんですが、管理職の人たちもいて、そういう場合に時折、週休4日制を提案しています。さすがに、びっくりされます。
最近は、そのあと、ツーマンセル型の業務形態の話を続けています。すると、これならできるかも、と思ってもらえます。日本の学校教育では、休まない・遅刻しないということを徹底しており、それは大人になっても美徳とされています。それは日本の良い面だと思いますが、それに経営があぐらをかいて、欠勤がないことを前提に組織と業務を構築してしまっています。その結果、休めない体制が出来上がっているのです。
普段はよいのですが、病気やケガで休まざるを得なくなったとき、組織は大ダメージを受けます。関係者たちは大騒ぎになるわけで、しばらく会社勤めをすれば、数年に1回くらいそういうことを経験するものです。病気やケガは一定確率で発生するものです。このようなイベントは、経済用語でリスクと言います。日本の組織は、リスクがヘッジされていない状態にあると理解できます。であれば、ヘッジすれば改善されます。ヘッジの方法は簡単です。互いに各自の仕事を交代できるようになっていればよいのです。

人材リスクのヘッジ法

人員の入れ替えが多く発生する組織ではそのリスクをヘッジすることが重要なので、ヘッジの方法が発達します。アルバイトのシフトが典型例です。
一般のアルバイトが行う業務は、基本的に誰でも対応可能です。ある程度は訓練が必要だったりしますが、特定の業務について、一人のアルバイトしか対応できないようなものは、あり得ません。もし、そのアルバイトが辞めちゃうと、業務が滞りますからね。そして、アルバイトは必要な人数(スロット)より多くの人数が常に登録されています。つまり、バックアップが担保された状態にあるわけです。組織は、登録人数がスロットより多くても、余裕が少なくなると募集をかけます。常に十分な登録人数が確保できて、人手が余っている状態が通常なのです。シフト表を綿密に作成することで、業務を効率的に配置します。

愚痴

日本の組織では、登録人数がスロットに一致するか、やや足りないくらいで、通常運転になっています。正社員の場合、登録人数×給与が人件費総額で経費になって、利益を削りますから、登録人数を足り内気味でむりやり業務を行うと、経営が楽になるわけです。そのような無理な経営は、欠勤がないことが前提になっています。それでは、仕事がきついし、休めないのは当たり前です。しかもそれは経営者の問題で、だから、政府は経営者に業務改善を指示します。しかしながら、日本の経営者は無能なので、コストカットでしか利益を上げられない状態にあり、結局状況を改善できず、社員に効率化を指示します。社員はすでに精一杯効率化をおこなっており、余力はないので、何もできません。そうすると、業を煮やした政府が再度経営者に指示を出し、ということが延々と繰り返されています。不毛です。
実際のところ、楽な業務とキツイ業務があって、その配分を何とかすれば、少しはマシになるよね、みたいなことはやっているかもしれません。でも、キツイ業務の負担を分散するというやり方だとコストが増えるので、楽な業務を束ねてキツイ業務に近づける方向で調整されます。すると人が余るので、リストラしてコストカットします。そうやって何十年もやってきて、現在に至っています。
理想的な解は、キツイ業務を分散して、楽な業務にするんだけど、コスト増につながらないようにする、というもののはずです。そのためには、業務にかかる単価を抑えるしかありません。そこから、「同一業務同一賃金」という発想が出てきます。でも、これはうまくいきません。なぜなら、社員は業務を選べないからです。アルバイトの仕組みがうまく機能するのは、アルバイトは登録時に業務を選んでいるからです。そして、その仕組みがうまくいくのは、アルバイトは仕事が無くても生死につながらないからです。業務の選択が生計に直結する場合は、極めて悲惨な状況が予想され、危険です。

実質的に行うのはシフト表の作成

ツーマンセル型の業務形態は、安全に「同一業務同一賃金」を導入する折衷案にもなり得ます。基本的に業務に応じて賃金を設定することができるはずです。社員は、能力に応じてある程度の希望によって業務を選択してもよいでしょう。あるいは、2つ持てる業務のうち、一つは業務命令で、もう一つは選択性というのもよいでしょう。希望が完全にかなうとは限りません。希望が叶う場合とかなわない場合で単価(賃金)に差をつけることもできます。
実際の運用にあたっては、シフト表をきっちり作成することだけが重要になります。ツーマンセルで、組み合わせが流動的だと、互いに互いの業務を監視・評価することになるので、業務改善が進みますし、より効率化します。今まではチーム制で同じようなことをしていたかもしれません。でもチーム制だと個々の責任があいまいになりがちだし、なれ合いが発生します。流動的なツーマンセルでは、なれ合いは発生しにくく、強制的な配置転換によって、モラルの向上が期待できます。
シフト表の作成という管理業務が増えますが、管理者の実質的な業務は低減されると思います。ツーマンセルでは、担当者同士の意思疎通が必要です。言った言わないの水掛け論にならないように、明文化することになります。それはつまり、勤務実態≒日報です。業務実態を把握するには、そのコミュニケーションを保管し、必要に応じて参照することで、実質的な目的を達します。通常、管理者には、個々の業務実態をまとめて報告する作業が課せられますが、ツーマンセルでは担当者同士が、お互いを管理する関係にもなるので、業務に問題があれば、かなり早い段階で発覚するようになります。管理者は、現場からの苦情を捌くだけで、実質的な管理になるということです。
この仕組みは、アルバイトの勤務実態を観察すると見つけることができます。一般に、アルバイトに単独でお店を任せるということはしません。牛丼チェーンでのワンオペが問題になりましたが、労働が過酷という問題以外に、勤務実態のモラル低下の問題の方が深刻です。アルバイトはお店の経営とは潜在的に敵対関係にあるので、お店の収益をちょろまかすことに関して、デメリットがありません。発覚するとクビになるかもしれませんが、元々長期契約ではないので、クビになっても痛くもかゆくもありません。
そのようなアルバイトでも、ちゃんと経営が成り立つのは、つねに複数の人で業務を遂行しているからです。お互いがお互いを監視・管理している状態なので、歯止めになるのです。しかも、本人たちは、お互いを監視・管理していることを意識しませんので、気持ちよく働けるわけです。
ここからわかる教訓は、一つの業務を複数の人で共有する仕組みは、管理業務を大幅に圧縮する、ということです。日本の人件費の多くは、管理業務に費やされているわけで、アルバイト導入で経費が圧縮されるのは、管理業務が間接的に圧縮されることも重要な要素だと理解できます。

隗より始めよ

他人に言うばっかりじゃなくて、自ら率先してみよう、と思いました。でもよく考えると、僕は根っからの自由人なので、週休4日というか、週に3日も一つの仕事をすることがない、ということに気づきました。気晴らしがてらに、いろんなタイプの仕事をミックスしているので、もともと本業は週休4日くらいで、のこりの時間を本業以外に充てているんですね。例えば、この記事のようなことを考えたり、それをお客さんに話したり。それって、本業とは違うんですよね。そもそも、僕のお客さんは、僕の本業にかかわる人の方が少ないしね。
僕は、本気で副業を考えようかな。本を書きたいと思っていたし、週3日は研究で、週3日は物書きに充てるかな。ただし、研究でも論文絡みだったりするし、そうすると、物書きが本業になるのか。難しいね。

さて、ほとんどの業務はツーマンセルにできるはずですが、個人の特殊な才覚を利用した仕事は替えが効かず、ツーマンセルにできません。それは組織にとってはリスクです。この話は、また別の機会に。




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