2020年9月18日金曜日

考える技術(1)なぜなぜ分析

研究で大事なことは?

僕は研究を生業にしているわけですが、学生に指導するということもあって、自己分析がてら「研究とは何か」についてちょっと哲学的に考えたりします。

好むと好まざるとにかかわらず、研究には「競争」の側面があります。誰もが「世界初」を目指して努力する世界なので、スピード勝負になりやすいのです。これは決して好ましいものではないと思うのですが、仕方ありません。
ネット社会に移行し、情報は迅速に拡散し、表面的な知識に関する有利不利はかなり小さくなってしまいました。また、実験装置の高度化によって、個人研究者が装置的なアドバンテージを得ることも難しくなっています。

こうした状況の最先端を行くのが分子生物学です。こうした分野では、基本的にすべての研究者が同じ知識・同じ手段を持ちます。アイデアで勝負できればよいのですが、非常に多くの研究者がしのぎをけずっているので、凡庸なアイデアでは太刀打ちできません。その結果、スピード勝負になります。そして、スピードを上げるためには、資金調達・人員増強という手段が有効なので、それらが実際の勝負どころとなっています。

いずれすべての分野がそのようになってゆくと思われます。さらに、分子生物学の研究をAIで行うという試みがあって、それが成功したという報告もあります。知識や手段がコモディティ化すると、個性が消えて、AIが台頭するという図式です。50年くらいしたら、研究者は廃業になっちゃいそうです。

研究というものを単純なフィードバックループに落とし込むと、早晩そのようになるのはほとんど自明です。ただ、僕たちのイメージする「研究」はそんな単純じゃない!と主張したいところです。でもその根拠は何でしょうか?

やはり、アイデアで勝負したいですよね!


アイデアと言っても、なにもないところからひらめいたりしません。知識や経験に基づき、いくばくかの演繹を加えて、アイデアが生まれるものです。大事なのは、知識や経験について考察することですが、その考察が凡庸であると、他者との差別化ができず、重要度が下がります。他者との差別が明白なくらいに深く考察することが、研究者としての武器になります。広く深く物事を考えるという能力は優秀な研究者に共通してみられる特徴だと思います。

ただ、深く考えるというのは、どういうことなのでしょう?「長時間考える」ということでは決してないはずです。あらためて問われた時、「考える」という行為について、実はよくわかっていないことに気づくはずです。

なぜなぜ分析

「考える」という行為を理解しようする助けになるのが、「なぜなぜ分析」です。「なぜなぜ分析」はトヨタが提唱する行動原理「トヨタ方式」の一部になっており、「五なぜの法則」とも呼ばれます。

トラブルなどの原因を探る場合、たどり着いた答えに満足せず、その答えに対してさらに「なぜ?」と問いかけ、5回くらい問答を繰り返すと、「真の原因」にたどり着く、という経験則を体系化したものが、「なぜなぜ分析」です。トヨタは全社的に「なぜなぜ分析」を導入していて、何かトラブルがあると、必ず「なぜなぜ分析シート」を使って報告させるようです。それはトヨタ社員だけでなく、トヨタに納品する関連会社にも要求しているようです。それどころか、その関連会社に納品を行う会社にもそれを課します。

僕はトヨタ本体との共同研究はないのですが、トヨタ関連会社とは仕事をしていて、その際に「なぜなぜ分析シート」を僕自身が書いたことすらあります。僕は「なぜなぜ分析」をずっと前に知っていたので、問題なかったですけど、知らなかったら勉強しないといけないところでした。

なぜなぜ分析の基本は極めてシンプルです。課題に対して答えを考える際に、とりあえず得られた答えを最終回答とするのではなく、さらに問いを深めるという作業を数回繰り返すだけです。でもこれは僕たちが学校教育で訓練されてきたやり方とはずいぶん違います。というのも、テストにおいて問いに対する答えを得たとして、その答えをさらに議論するなんてことは絶対しませんからね。

テストの課題には答えが設定されています。だから、テストというのは設定された答えを探すゲームと言えます。でも、現実の課題では答えの設定はありません。答えがあるのかすら不明です。あるいは、正解らしい答えが得られたとしても、それが正解かなんて誰にもわかりません。だから、その答えが正解かどうかを吟味するという作業は最低限必要です。
しばしば、その答えに欠陥が見つかります。その欠陥に対してさらに分析を加え、より本質的な答えを探す必要があります。それをどれだけ徹底的に繰り返すことができるか、ということが、問題解決能力そのものになるわけです。経験則によって、5回くらい問いを繰り返せばよい、ということがわかっていて、それをフォーマット化したものが「なぜなぜ分析」です。

「なぜなぜ分析」に関する啓蒙書はいっぱい出ていて、日本では、結構メジャーな思考法ですし、かなり効果的だと僕は思います。

なぜなぜ分析は難しい

なぜなぜ分析は習得にかなり時間がかかります。というのも、僕たちはそのような思考法になれていないのです。日本の学校教育では教えられたことに疑問を持つことは禁じられています。そのため、教えられたことを覚えることが勉強であり、テストでは記憶力が試されます。そのため、テストにおける思考の基本は「思い出す」になります。その結果、僕たちは「考える」≒「思い出す」となってしまっています。

一方、なぜなぜ分析は問いの分析・明確化という思考プロセスが重要となります。その際には、論理が重視されます。ロジカルシンキングという思考法がすこしはやっていますが、なぜなぜ分析はさらに進んで、論理的思考を多重化します。

なぜなぜ分析が難しい理由は、一度それをやってみればわかります。問い→答え→問い→答え→…と繰り返すだけなのですが、問い→答えはまあまあできる一方、答え→問いで詰まります。そして、3回目くらいから問いが設定しにくくなります。多くの場合、同じ問いが現れます。それは一般的に「堂々巡り」と呼ばれています。なぜなぜ分析では、堂々巡りを避けるのがとても難しいのです。

問いの分析

問いがあった場合、僕たちはほとんど本能的に答えを探してしまいます。それは、学校教育において刷り込まれている行動原理です。答え探しに終始してしまうのは、学校教育で設定される「問い」自体が疑問の余地のないくらいシンプルだからです。例えば、算数のテストにおける典型的な問題文で「以下の計算をしなさい。」とあったりするわけですが、この問いに関して疑問の余地はありません。だから、問いを無視して計算を始めてしまいがちです。よくある話に、「正しいものを選べ」ではなく「間違っているものを選べ」で問うと正解率が激減する場合がある、というものがあります。多くの人はテストにおいて問いを読むことすらしません。

現実の課題は多種多様です。問いが明文化されていることすら稀です。なので、正しい問いを見つけることすら課題に含まれるのです。その場合、何が問われているのかを分析してからでないと答え探しにすら入れません。なぜなぜ分析では、とりあえず得られた答えを分析し、次の段階の問いを見つけなければなりません。答え→分析→問いという段階を踏むわけです。で、難しいのは、答え→分析なのか、分析→問いなのか、どちらでしょう?実のところ、詳しく分析出れば分析→問いは比較的容易なはずです。というか、それができないということは分析が甘いということです。ということは、答え→分析のプロセスがボトルネックだとわかります。難しいのは、分析なのです。

分析の分析

分析の能力が高ければ、なぜなぜ分析が進むわけですが、どうすれば分析の能力が向上するのでしょう?そのためには、分析では何をしているのかを明確にしなければなりません。

分析という言葉は、「分(分ける)」と「析(木を斧でばらばらにする)」という二つの文字から成り立っています。このことから、複雑な課題を、よりシンプルな部分に分解する、というのが分析の本質だとわかります。なので、分析のプロセスにおいては、課題をいくつかの要素に分解することが大事になります。課題を要素に分解するというのは、科学の手法そのものです。ですから、分析という言葉は科学のイメージ重なります。そして、分析を思考プロセスに強制的に組み込むなぜなぜ分析は「科学的」なのです。

科学における分析では、分析装置の比重が大きいという印象です。ですが、ここで言う分析とは、「思考」による分析です。装置は必要ないので誰でも実施可能なはずです。そのような分析を日常的に行っている人は稀です。つまり、多くの人は分析の訓練が足りていない、ということです。だから、なぜなぜ分析が億劫に感じるのです。

<つづく>



2020年5月7日木曜日

コロナ騒ぎはいつ終了するか?

緊急事態宣言が延長

2020年5月4日、緊急事態宣言が5月31日まで延長になりました。皆の頭に去来するのは、こんな状態がいつまで続くのか?ということだと思います。
そもそも、疫病が終息するのには2種類しかありません。
(1)特効薬等や隔離の徹底により、病気を根絶する。
(2)ワクチンや感染の飽和により、集団免疫を獲得する。
結核などはペニシリンなどの特効薬により、病気を根絶してきました。一方、インフルエンザや通常の風邪(コロナを含む)の場合は、集団免疫により流行が終息します。
病気の程度が軽い場合は、全員が感染して集団免疫を獲得する方法が一般的です。病気の危険性や薬・医療費というコスト面で有利だからです。
一報、病気が重い場合は、高コストな薬や隔離療養を採用してでも、病気を根絶する必要があります。特に、死亡率が10%以上になるような場合は、選択の余地がありません。
人類は大変な努力をして、いくつかの致命的な感染症を克服してきました。その中には、狂犬病のように、家畜などへのワクチン接種という、びっくりするくらい高コストな方法すら採用してきました。何と言っても、狂犬病の致死率は90%くらいあるそうですからね。あのエボラやペストでさえ、50%前後。狂犬病がいかに恐ろしく、人類がナーバスになっているか、という話です。

SARSの時は致死率が10%程度で、大変なパニックになりましたが、完全隔離により根絶に至りました。MERSはさらに高くて致死率40%です。こちらは隔離は進んでいるものの、完全な根絶に至っていません。
豚インフルエンザは、致死率が0.5%もなくて、最終的に全人類が罹患して集団免疫獲得により、終息しました。ま、インフルエンザってのはもともと豚を経由しているっていう説があって、パニックになるほどではない、ということだったのかもしれません。

COVID19はどのようにして終息するか?

現段階で、COVID19は収束の兆しを見せていると考えれています。そのため、多くの国々で経済活動・市民活動の再開が検討されています。
ただ、僕たち日本人が知っておかねばならないのは、海外が言うところの経済活動再開とは、現在の日本程度の経済活動を目指す、程度の話だということです。

日本では諸外国のようなヒステリックな社会統制政策は行われていません。スーパーは営業しているし、流通も普段通りです。公共交通も動いています。レストランも昼間は営業しています。外出は自由です。移動制限もありません。
もちろん、学校は休校しているし、旅行するひとはほとんどいません。でも、散歩すると逮捕されるなんてことはありません。むしろ、健康維持のために散歩するべき、という話になっています。
海外ではCOVID19終息の兆しとして象徴的に報道される「スーパーが再開」が、日本ではニュースなったりしません。だって、日本のスーパーはずっと営業しているんですからね。再開しようがないのです。
日本はCOVID19の終息という点では世界の最先端なのです。

一足早くに終息宣言をだした中国は、完全な隔離により病気を根絶する、という戦略を取り、比較的短期に病気を克服しました。経済活動や市民活動の再開が大々的に報じられています。リーマンショック時のようにこのまま中国経済をけん引し、景気を下支えするという楽観的見通しもあるかもしれません。でもそれは否定的です。いまや経済はグローバル化しており、サプライチェーンが複雑化しています。中国国内でサプライチェーンを維持することは実質的に不可能だし、サプライチェーンを克服したとしても、売り先(マーケット)が中国国内にあるとは限りません。
現在の中国では、感染爆発は行らないものの、ごく少数のCOVID19患者が、海外からの渡航者の中に見つかっています。渡航者の厳密な隔離により、市中感染を防げていますが、裏を返せば、渡航者経由で感染が国内に持ち込まれた場合、感染爆発の危険性を排除できていない、と言えます。特効薬がないので、短期に病気を抑え込めないし、早期診断も方法がないので、長い潜伏期間のために潜在的な感染者の特定が原理的にできません。なので、人や物の国際的な移動が活発化すると、中国では再びCOVID19が蔓延します。
COVID19後の状態を考えた時、鎖国するなら中国のように抑え込むのは良いですが、そうでないなら、中国ような方法は採用するべきではありません。あるいは、ワクチンがいきわたるまで鎖国すると決意するなら、それはそれでよいと思いますけどね。来年の今頃、ワクチンが使えるようになったとして、ワクチンがいきわたるにはさらに1年くらいかかります。2年間鎖国するなら、それでもよいでしょう。

日本の政策はけっこうゆるゆるで、COVID19を本格的に抑え込もうとしていないように見えまず。実際のところ、中国のように無理やり抑え込もうとしてないと思います。日本の基本戦略は、集団免疫の獲得だと思います。

そもそも、COVID19は新しい病気ですから、特効薬はありません。だから、力ずくで病気を制圧するには、隔離政策しかありません。歴史的に、日本はいくつかの病気で隔離政策をおこなってきましたが、ことごとく不幸な結末を迎えています。それもあって、隔離政策には及び腰なのだと思います。それは悪くないことだと思います。とすると、病気を根絶することは困難だという結論になります。ということで、必然的に目指すのは集団免疫です。

COVID19は新しい病気なのでワクチンはありません。ワクチンのない病気にたいして集団免疫を獲得するには、大多数の人が感染を経験し、免疫保持者が50%を超える必要があります。しかしながら、COVID19はまあまあ致死率が高く、10%近くの人がICUの小瀬あになります。日本はICUの数が先進国中でワーストクラスですから、気を抜くとICU不足になります。イタリアの例をみますと、ICUが不足した場合、致死率が10%近くになります。とすると、SARS並みとなり、徹底的な隔離が必要になり、集団免疫を戦略が破綻します。
イギリスは最終的に集団免疫を目指すわけですが、それを発表したとたん、医療崩壊(ICU不足)に至り、致死率が上昇し、強い隔離政策に追い込まれました。すると、致死率が下がったので、再び集団免疫を目指しているというのが現在の状態です。再び医療崩壊に至らないように、どのくらいの行動制限だと医療崩壊しないのか、おっかなびっくり探っているというのがヨーロッパの状態です。

我が国のポリシー

日本の政府は信用ならないわけですが、専門家たちはこっそりと、感染爆発させないように国民を感染させてゆく、という戦略を議論していると思われます。

1年以内の終息を目指すなら、ワクチンに期待するのはムリです。専門家の中には2年程度での終息を予想している人もいますが、その根拠はワクチンがいきわたる時期です。集団免疫の獲得をワクチンに頼るなら、2年必要なわけです。
東京オリンピックもありますから、それは許容できません。1年以内の終息を目指すなら、国民の大半を感染させるという方法でしか集団免疫は得られません。その際、医療崩壊するとまずいので、医療崩壊しない程度に感染を蔓延させる、という非常にきわどい方法を取らざるを得ません。

医療崩壊はICUの不足で生じるということがわかっていますから、ICUの数から逆算して感染者の数をコントロールすれば、良いわけです。そのためには、本当に危ない患者だけをCOVID19とするだけで十分です。軽症であったり無症状であったりする人たちが病院に滞在すると医療崩壊が近くなりますから、それを避けたいわけです。どうするかということで考え出されたのが、発熱4日ルールの徹底です。

一般の風邪では薬は3日程度しか処方されません。その理由は、たいていの風邪は発熱から4日以内に治癒するからです。市中の医療機関での診察では、重篤な病気の兆候を見つけ出すことがミッションとされています。そのために、100項目以上とも言われるチェックを医師は瞬時に行っていると言われています。そのチェックは病院に入った瞬間から始まっており、待合室での会話すら、診察の対象となっています。
すべての項目をパスした患者は「風邪」と診断され、症状に応じた定型パターンの薬が処方されます。その際の処方日数はたいてい3日~7日です。7日の場合は「念のために」抗生物質が処方されています。ただ、それも「念のため」でしかありません。検査のコストが薬価よりはるかに高いので、検査せずに薬を処方するのです。
ここからわかるのは、4日以内で治るような発熱は軽い風邪であって、COVID19ではありえない、という臨床での経験があるからです。だからこその4日なのです。そして、その中には軽症のCOVID19も少なからず混じっています。しかし、それらは重篤化しないので、COVID19 であったとしても治療や隔離の対象とする必要はない、という判断があるのだと思います。あるいは、軽症にとどまるCOVID19の変異体が広まるのはむしろウェルカムと思っているのかもしれません。

ICUのベッド数から逆算すると、おそらく感染者が2万人くらいいるじょうたいが適正です。診断がついてから退院するまでの日数をおよそ2週間とすると、一日の感染者数が1400人くらいまでなら耐えることができます。ただこれは全国まんべんなく感染者が出て、全国まんべんなくICUがある場合であり、実際の許容量は1000人を切る必要があるでしょう。そして、気を抜くと感染爆発しちゃうので、余裕が必要です。なので、一日の感染者数が500人くらいなら、パニックは決して生じないだろうという概算かもしれません。
そういえば、1日の感染者数が500人くらいまでで耐えてましたよね。

ただ、こんなにちんたらした感染者数だと5000万人がかんせんするのに50万日=1500年くらいかかります。目がくらみます。でも朗報があります。症状のない不顕性感染がかなりいるということが抗体検査によってわかってきています。我が国においても10%近い人に免疫があるかもしれない、という話が出てきています。本格的に流行して2か月くらいしか経ってませんから、今の状態を3か月くらい続けたら、もしかしたら集団免疫が効くくらいになるかもしれません。
そのためには、一気に終息に向かうのではなく、現状維持をうまく目指す、というのが本音なんだと思います。

でも、僕は持病があるので、致死率10%です。感染は避けねばなりません。

2020年4月6日月曜日

コロナ収束への道

随分盛り上がってしまいました

ちょっと不謹慎ですけどね。新型コロナ肺炎、世界中でパニック状態ですね。日本も、パニック寸前ですけどね。どうなるんでしょうね。
僕はこういうのを予想すると、悲観的なんですけどね。この新型コロナに関しては、僕の悲観的な予想を上回って、悪い方向に行きますね。

この病気の厄介なところは、潜伏期間が長いことです。2週間ではなく、3週間ぐらいありそうです。感染してから、2週間後に症状が出て、でもほとんど風邪なので経過観察で、1週間ぐらいして治らないもんだから、検査しましょう、となります。味覚・嗅覚障害といった特徴的な症状がない場合、もっとかかるかもしれません。病気としての潜伏期間は2週間ですが、確定診断に至るにはもう1週間かかるということで、その1週間は潜伏期間と言ってよいんじゃないでしょうか。少なくとも「疫学」的には潜伏期間でよいと思います。

なので、どんな手段を講じても、その成果は2週間後、3週間後にしか現れてきません。ということは、2~3週間は現状が継続するってことです。もっと言えば、2~3週間後の状態を予測できるというわけです。
今は4月6日ですけどね。感染者数は3000人強。今日にも緊急事態が宣言されそうな雲行き。
今、何らかの強硬策に出てもね、2~3週間は現状のまま。どんどん増え続け、来週には1万人、来週末には2万人になっているでしょうね。

我慢大会

新型コロナに関しては、ワクチンなんかないし、特効薬もない状態です。当面というか今年は、日々の活動を制約し、我慢を重ねることになります。ただ、効果が出るとしても2週間後ですからね。僕たちの我慢をあざ笑うように患者数が増えてゆくのは必至。来週の今頃には、ヒステリックに何でもかんでも自粛していると思われます。

  • 学校は休校でしょうね。
  • ホテルは野戦病院化するでしょうね。海外では見本市会場が隔離施設になっているようですが、日本の場合は、早々にホテルを隔離施設に転用することが決まりましたからね。軽症者の受け入れは、海外よりも好条件だといいですね。
  • 仕事で出勤も制約を受けるでしょうね。事業の維持に必要な最低限度の人員以外は、週1~2日の出勤になるでしょうね。
  • 流通は止められませんからね。そこは残るでしょうね。
  • タクシーやバスは窓を開けて運行するでしょうね。
  • 最近の電車は窓が開かないので、各駅停車のみの運航になるかもしれませんね。停車のたびに空気入れ替えとかね。
  • ショッピングセンターは、スーパー部分以外は営業しないかもしれませんね。
  • コンビニやドラッグストアは、夜の営業をやめるかもしれませんね。
  • 飲食店は、営業停止にすると働く人たちが困るので、営業は続けると思いますが、例えば夜9時以降は営業しない、とかになるでしょうね。
  • 普通の雑貨や衣料のお店は営業しないかもしれませんね。

毎日のように利用する店舗は営業できるだろうけど、週末に行くような店舗は大きく制限を受ける、という感じまで達すると思のです。来週末くらいには、そうなると思います。

いつまで我慢するのか?

こんな生活は長く続けられません。せいぜい1か月かな。でもね、潜伏期間を考えると、2週間はこのまま患者数が増加し、その後鈍化するとしても、患者数の増加は3週間くらいは絶対続くことになるよね。うまくいくと減少に転じるけど、潜伏期間が長いのでレスポンスも緩やかだろうから、1週間くらい横ばいかもね。4週間たってようやく減少傾向が確認できるという状態かもね。これは楽観的過ぎるかもしれません。

さて、その状態で、我慢大会を終了できるかというと、たぶんそうではなくて、もう1週間様子を見ましょうとなるでしょうね。あるいは、2週間経って、効果が見えないので、その時に改めて、もう4週間延長しましょう、となるかもしれません。

今から1か月後、緊急事態の終了予定日ですが、患者数は10万人近いはずです。その時、緊急事態を解除できるかというと、たぶんダメでしょうね。医療崩壊していて、大変な混乱状態にあると思うのです。ゴールデンウイークは家にいろ、がスローガンになっていると予言しておきましょう。

だから、最初から緊急事態の終了条件をきっちり作っておくべきだと思います。患者増加数がピーク時の半分になったら解除する、とかね。
政治的なことってのは、始めるより終了する方がずっと難しいってのは、よく知られたことです。

いつ終息するのか?

患者数が1万人だと、重症者は20%の2000人と見積もられます。そして、その2000人は病院のベッドが絶対必要な人たちです。いわゆるICUというヤツです。日本はICUが少ないのです。10万人当たり4ベッドらしいです。その計算だと、4000ベッドとなり、2000人までは何とかなるでしょう。だから、患者数が1万人までは持ちこたえられるでしょう。でもそれ以上は問題です。

先の見積もりによると、来週早々には1万人に達します。そして来週末には2万人です。その時、完全に医療崩壊します。イタリアもニューヨークもICUが足りなくて、死亡者が激増しました。ニューヨークでは1日の死者が600人とかです。患者数じゃないですよ!

イタリアはまだ終息が見えていません。患者数の増加はようやく横ばいくらいです。患者数ではなくて、「患者の増加」ですよ!毎日何千人もの患者が発生しているのです。終息には程遠いです。

ニューヨークは、日本の3週間先を行っているとよく言われています。3週間後にはニューヨークのようになっているわけです。その状態で来週終息なんてことには決してなりません。日本は、ちょっとはマシだと思うのですが、終息なんて口にするのはジョークとしても通じないかもしれません。

夏までには、収まってほしいところです。


2020年3月25日水曜日

コロナ対策の論考


僕は大学に勤めているのですが、大学もCOVID19対策が本格化しています。今日は2020年3月25日。本当なら卒業式が行われるはずでした。でも、COVID19対策でキャンセルになっちゃったんです。卒業する学生たちがかわいそうです。
卒業式は仕方ないとしても、先日開始した対策がチンプンカンプンです。上層部がアホなのか…。なので、ちょっと整理してみました。

対象者の分類とまとめ

大学の構成員を分類し、それぞれについて、特徴をまとめてたのが次の表です。

分類予想される感染経路と問題点
学生学生間の交流/通学/プライベート時の行動
多くの学生が電車やバスを使って通学している。大学外の活動が比較的活発。外出を控えるように申し渡すなどしないと、いかなる対策も無意味になる。"
教員研究室内での交流/講義/会議/通勤
研究室内はいかなる対策をしようとも濃厚接触になっている。教員間あるいは職員との接触は主に会議。会議は稀なので、教員間の感染はほとんど無視できる。学会活動等での出張が多い。電車・バス通勤の比率は比較的低い。
研究室家族並みの濃厚接触であるが、逆に言うと、研究室メンバーに感染者が出た場合、当該研究室は則閉鎖という対応しかない。
職員会議/通勤
セクション間の交流が比較的多いため、感染者が出た場合の影響が広範囲に及ぶ可能性がある。
一般公共交通機関の乗客や保護者、買い物や余暇で訪れる市中の人々が想定される。
学生・教職員にとっては、余暇の規制・買い物等の規制、交通機関利用の規制が効果的。

感染防止対策のまとめ

感染防止を考える場合は、誰から誰への感染を防止するのかを明確にする必要があります。それをまとめたのが次の表です。

施策 概要 感染防止効果
学生間学生/教員研究室内学生/一般教員/一般職員
入学式中止学生間および保護者間の感染防止にはなる。教員のほとんどは不参加。ただし、その後の講義等で、学生間の感染が進行する。 ×××
講義延期学生間の接触は押さえられるが、いつまでも講義を延期することは現実的ではない。教員と学生の接触は限定的なのでもともと効果は少ない。休暇中の学生の行動によっては、感染防止効果が失われる×××
研究室活動の自粛研究室内での感染は押さえられる。しかし、研究室メンバーはもともと濃厚接触者(家族と同等)なので、学生等に感染者が発生した場合、研究室は2週間の完全閉鎖になる。研究室の学生が通学時に感染することは避けられる。××××
出張禁止教職員(および研究室の学生)の学外での感染防止に効果がある。多くの学会活動や一般企業での出張はすでに停止しているので、実質的なデメリットはほとんどない××
教職員の出勤自粛研究室は実質的に閉鎖となり、研究室活動の自粛と同じ効果が得られる。さらに、教職員の通勤時の感染が避けられる。通勤に電車やバスを利用する教職員は基本的にリモートワークとし、その他の教職員で、出勤しなければできない仕事を分担するなどの措置により、デメリットを低減できる。週1~2回程度を出勤の上限とするなどが考えらる。×
大学の閉鎖施設維持に必要な人員をのこして、2週間~1か月、大学構内への出入りを強く制限する。デメリットも多いが、効果は絶大。全員が自宅待機を守れれば、大学内の感染を完全に停止することができる。逆に閉鎖中の教職員・学生の行動を規制しないと効果が失われる。また、市中感染が深刻化した場合は、効果が一時的なものにならざるを得ない。
行動記録の提出プライベートも含めて、行動記録の提出を義務付ける。様々な活動自粛時に、自宅待機しないと効果が激減するので、それを防止し、緊急時に行動追跡できるようにする措置。プライバシーの問題がある。グーグルマップのタイムライン機能を使えば、比較的容易に追跡記録が作成できる。
Web講義講義を動画配信する。学生に関連する感染は防止できる。学生の感染防止には効果があるので、研究室内での感染も間接的に防止できる。デメリットは、学習効果を上げるには工夫が必要であると、準備が大変だということ、インフラが整っていないこと。学生のIT環境が整備できていないことも重大で、それには費用的な手当てが必要だし、機材をそろえるには1か月以上必要と思われる。また、Web講義により、文部科学省の単位認定条件をクリアできるかという問題もある。これは文科省から大量の予算をもらうべき。演習や実験科目をどうするかという問題が残る。××

デメリットの少ない対策から順次適用すべき

最終手段は大学の閉鎖であることは間違いないが、それは劇薬すぎます。当然、費用対効果、この場合は、デメリット対効果を考えた時に効率の良い対策から行うべきです。

入学式の中止は、デメリットは少ないですが、効果も一時的です。

次にデメリットが少ないのは、出張禁止です。大学教員の出張というのは概ね学会がらみです。学会そのものもありますが、学会関係の会議が多いです。実のところ、学会関係の会議は、現在ほとんどメール会議になっていますので、出張はすごく少なくなっています。また、多くの企業は出張を禁止しています。その影響もあり、今後、学会が行われない可能性も高いのです。ということで、出張禁止にしても実害はほとんどありません。
一律に出張禁止すると、規則を破らないと出張できなくなりますし、出張費が自腹になる可能性もあります。そうすると、よっぽどのことがない限り、出張しなくなりますよね。

行動記録の提出もデメリットはあまりありません。感染は仕事中だけでなくプライベートでの起こり得ます。なので、仕事上の制限をいくら厳しくしても、プライベートでの行動がハイリスクなら、効果は期待できません。なので、ある程度プライベートを規制する必要があるのです。実際に規制すると人権問題になりかねませんので、できれば、精神的に規制する形が望ましいでしょう。行動記録の提出を求められる可能性があると思うと、無理して人混みに出かけると、後でバレて大変なことになりますから、心理的にハードルが高くなります。

もし可能なら、Web講義を導入するのが良いのですが、準備が大変です。一部の講義は作り直しを余儀なくされます。特に、学生のプライベートでのIT環境が整っているかどうかというのが問題になります。学生によっては、スマホのみという場合もあり、講義を数回視聴するだけで、通信制限を食らう可能性もあります。

〇×表を見ると、効果があまり期待できない対策の筆頭が、研究室活動の自粛です。費用対効果という点ではおそらく最悪の部類になります。そして、なぜかうちの大学はこれを始めてしまったのです。訳が分かりません。


2020年2月20日木曜日

新型コロナ肺炎についての考察

今日は2月18日

今日は2月18日(火曜日)。一昨日、政府の対策会議にて、現状認識として封じ込めを諦め、感染拡大初期であると改め、感染ペースの遅延対策を基本方針とすることが決定されました。17日(月曜日)の午前中には、医療機関に相談すべき自己診断基準が示され、発熱時は仕事や学校を休むべきだという勧告がなされました。

実際のところ、基本的には僕の予想通りの展開になっています。
僕は2月下旬には、予防的なマスク奨励の状態になるとみて、研究室メンバー用に2か月分のマスクを買い込みました。16日には体温計を新調しました。非接触型の体温計も検討したのですが、精度が良くないので諦め、15秒で測定できるものを選択しました。

日本国内の感染者数は500名を超えました。そのうちクルーズ船での感染者は450名程度なので、実質の国内感染者は50名程度です。ただ、ここ数日、一日10名くらいのペースで市中感染例が報告されています。今後、どんどん増えます。

統計的には、およそ2.5日で患者数が倍になるという報告があり、このままいくと、3週間後(大学入試後期日程のころ)には10万人規模の感染が報告されることになります。ちょっと恐ろしいです。

報道等から推測される感染力

医療専門家や政府はパニックを恐れるので、どうしても病気を過小評価する傾向にあります。なので、いろいろ独自に分析してみます。

この病気で特徴的なのは感染力です。
特に注目すべきは医療従事者の感染です。最初の死亡例となった千葉のおばあさんの場合、担当看護師が感染しています。新型かどうかにかかわらず、おばあさんには肺炎の症状があったはずなので、看護師は防疫を心掛けていたはずです。マスク・手洗いは一般の人より徹底していたはずです。にもかかわらず、感染しています。
クルーズ船の検疫官も複数感染しています。クルーズ船では横浜到着前から感染者の存在が強く推定されていましたから、検疫官は徹底した防疫を行っていたはずです。にもかかわらず感染しています。
看護師も検疫官も防疫に関する専門家のはずで、我々が可能な防疫手段よりもワンランク以上徹底した対策をしていたと思われます。彼らが感染したという事実は、「通常の防疫措置では防げない」ということを意味しています。
上海の意思はエアロゾルによる感染の可能性を報告しています。一般にエアロゾル感染というのは極めてまれです。というか、現在の医学ではエアロゾル感染という概念はほぼ否定されています。エアロゾル感染するためには、ウイルスが小さいこと、少量のウイルスで感染すること、が条件です。インフルエンザですらエアロゾル感染しないということが研究によって確かめられています。ですので、現在の医療では「飛沫感染を防止すれば十分である」として、マスク・手洗いを徹底すればよいとしていますし、せいぜい保護メガネが着用される程度です。しかしながら、中国では全身を包むタイプの防護服が標準になっています。昨日アメリカのチャーター機がクルーズ船の米国人を移送しましたが、米軍スタッフは全身タイプの防護服を着用していました。ということは、予防的な対応ではあると思いますが、米軍はエアロゾル感染の可能性があると考えているわけです。

沖縄の女性タクシー運転手が武漢からの観光客を乗せたことが原因で感染しました。さて、タクシーに乗ったとして、運転手と乗客がどれほど接触するでしょう?会話するとしても面と向かうことはありませんし、運転手と乗客の間にはプラスチックの衝立が一般的です。会話等での飛沫が運転手にかかることはまずありえません。握手なんかしません。考えられるのは、料金の支払い時にお札を受け渡す場面です。紙幣を介して感染することは考えられます。実際、現在の中国ではお札を殺菌するという取り組みが行われているくらいです。中国政府もお金を介した感染の可能性を疑っているわけです。ただ、中国人観光客の場合、キャッシュレス決済かもしれません。
次に考えられるのは、車内清掃時の感染です。ただし、車内清掃は相当な時間が経過した後に行われたと思われるので、一般には感染経路としては考えません。しかし、このウイルスに限ってはそういうことがあるのかもしれません。
しかしながら、エアロゾル感染があるとすると話は変わります。エアロゾル感染では狭い車内に数分一緒にいるだけで感染します。

エアロゾル感染が強く疑われる事例が中国で報告されています。レストランで武漢からのグループのテーブルの横のテーブルにいた客が複数感染しています。レストランの隣のテーブルの客と体を触れることすら普通はありません。この事例はエアロゾル感染を強く示唆しています。

これらのことから、新型肺炎はエアロゾル感染すると思って対応するべきでしょう。ただ、エアロゾル感染するとすると、防御手段がありません。ですので、政府見解では得あるゾル感染しないとしています。


真の潜伏期間

東京の屋形船では複数の人が感染しています。感染力に注目されがちな事例ですが、重要なのは潜伏期間です。屋形船で新年会が行われたのは1月18日です。最初の感染が確認されたのは2月上旬、複数の感染が確認されたのは2月中旬です。つまり、2週間程度完全に見過ごされていたということです。ただ、新型肺炎の感染の広がりが認識され始めたのが2月に入ってからなので、最初の感染確認が遅れたのは仕方ないのかもしれません。
重要なのは、集団感染状態にあるにもかかわらず、追跡調査しないとそれがわからなかったということです。1か月も前の新年会が集団感染の原因なんて思いもよりません。こういうことが起こるのは、症状が出るまでの潜伏期間が2週間以上あるという事実です。中国からも長い潜伏期間が指摘されていますが、実際の潜伏期間はもっと長いと思われます。
そして大事なのは、感染後にウイルスをまき散らし始めるまでの期間が極めて短い可能性があるということです。無症状の感染者が多数報告されていますが、多くの場合最終的に症状が出ることが報告されています。ウイルスをまき散らし始めるというのは病気としては立派に発症していることになります。つまり、ウイルスをまき散らし始めるまでの真の潜伏期間は極めて短いということです。
屋形船の場合、懸案の新年会の3日前に武漢からの団体観光客を受け入れています。その時にスタッフが感染したと推定されます。そして、3日後にはウイルスをまき散らし始めたということになります。真の潜伏期間は3日です。インフルエンザと同程度かそれより短いくらいです。その後、明らかな症状が出ない「偽物の潜伏期間」が2週間程度続くわけです。これはとても厄介なことです。防疫はほぼ不可能です。

また、真の潜伏期間の最短は3日として、最長はどのくらいでしょう。政府見解では12.5日ということですが、これは疑わしいかもしれません。というのも、チャーター機で武漢から戻ってきて千葉のホテルに留め置かれた人が12.5日経って解放されたのですが、そのあくる日に体調不良を訴え、感染が発覚しました。明らかに、12.5日では足りなかったということです。
真の最長潜伏期間の推定には、クルーズ船のケースが参考になります。クルーズ船では連日のように感染者が報告されています。クルーズ船で隔離対応が始まったのは2月1日ごろなので、18日間隔離されたことになります。にもかかわらず、感染報告が止まりません。クルーズ船内の管理がザルだという話がありますが、乗客はむしろ自主的な隔離をしていたはずです。ということは、実際の潜伏期間は14日どころではない、ということを意味します。
さらに、クルーズ船の乗客たちの中には複数回検査して、感染発覚に至ったケースも多くあります。きちんとしたデータがありませんが、検査可能にまでにかなりの時間が必要だということを意味しており、18日程度の潜伏期間があり得るということだと思います。

実は、屋形船のケースでも極めて長い潜伏期間が推測されます。屋形船での新年会は1月18日で、最初の患者の発覚は2月上旬でした。そこから、関係者には自主的隔離措置が取られたと思われますが、感染報告は後を絶ちません。実際、屋形船で感染した人が2月中旬に症状が出て感染発覚となっています。潜伏期間は最長で1か月に達する可能性すらあります。

死亡率から見るインフルエンザとの違い

新型肺炎での死亡率は2%程度ということが今朝WHOから発表されました。医療環境のよい日本での死亡率はその半分くらいになるかもしれませんが、それでもインフルエンザ(死亡率0.025%)の50倍の死亡率です。
僕が注目しているのは、重症化してからの回復者数です。現在では実数を把握できていませんが、初期のころは数字が出ていて、回復者数と死亡者数はほぼ同数あるいは死亡者数の方がやや多い状態でした。これから回復者になる隠れた回復者数の存在を加味すると、実態としては、回復者数と死亡者数はほぼ同数とみていよいと思います。つまり、重症化すると死亡率が50%ということになります。日本でも複数の重症者が出ていますから、これから実態がわかってくると思いますが、重症からの死亡率が10%を切ることはないと思われます。やはり、かなり怖い病気であると判断せざるを得ないと思います。

実は、今米国でインフルエンザの死亡が爆発的に増えています。1万5000人くらいがインフルエンザで死亡しているといいます。さて、インフルエンザの死亡率が0.025%とすると、死亡者の4000倍の患者が見込まれます。すると、全米で6000万人の患者がいることになります。米国の人口は2億5千万人くらいなので、4分の1の人がインフルエンザに罹患していることになります。もしそうなら、社会システムが崩壊していないといけません。が、そうなっていないことから、異常に高い死亡率を持つ強毒性のインフルエンザということになります。そうなるとパニックのはずです。でもそうなっていません。

今朝ですが、米国CDCがインフルエンザで死亡とされる患者が新型肺炎だったかどうかの検査を行うという記事を目にしました。米国では医療保険に欠陥があり、多くの人がインフルエンザ程度では医療機関にかからないという実態があるそうです。インフルエンザで死亡とされていても、インフルエンザとの確定診断がついている例は少なく、実際にはインフルエンザではないケースも多いと推定されるそうです。そして、CDCは米国でのインフルエンザ死者数の異常さを鑑み、その中に相当数の新型肺炎が含まれている可能性を考慮しているというのです。

さて、こうなると米軍のチャーター機スタッフが完全防護であった理由も納得です。もし、米国で新型肺炎が蔓延済みでパンデミック状態だったとすると、大変なことです。

愛知県ではハワイ帰りの夫婦が感染していることが判明しています。感染経路が不明なのですが、ハワイは米国です。もしハワイが隠れたアウトブレイク地域だとすると、その影響は全世界にすでに及んでいると推定されます。
ハワイ帰りの夫婦の発症がハワイ帰国後日が浅い状態だったので、ハワイでの感染の可能性が低いかも、と思っていたのですが、東京の屋形船の件を鑑みると真の潜伏期間は短いので、短期間で発症してもおかしくないし、米国でインフルエンザとされている中に相当数の新型肺炎が含まれるとすると、ハワイが感染源でもおかしくありません。ただ、このようなストーリーになるには、不確定要素が多すぎます。現時点では可能性でしかありません。

エアロゾル感染と無症状感染が両方ともあるとすると、今後の展開は最悪ペースになると思われます。すなわち、3月下旬~4月中旬にかけて日本のほぼすべての人が感染する可能性があります。そのうち、2%が死亡するということなので、100~200万人が死亡してしまいます。コロナウィルスは夏になると感染力が低下し、自然に収束するはずですが、大半の人が4月中に感染することになり、夏になる随分前に多数の犠牲者が出るでしょう。
もちろん、そうならない可能性もあります。が、このままいくと全国民の感染は避けられず、2%の死亡率が本当だとすると、統計的に確実なシナリオ、ということになります。統計学は無慈悲です。

現在、中国武漢での感染拡大は落ち着いているように見えます。でもこれは武漢の全市民が感染済みである結果かもしれません。2.5日で倍という感染ペースだとすると、そろそろ武漢の総人口である1000万人に到達しているはずだからです。これからは、感染者数は拡大せず、死亡者数だけが増えるかもしれません。統計は無慈悲なのです。