2020年3月25日水曜日

コロナ対策の論考


僕は大学に勤めているのですが、大学もCOVID19対策が本格化しています。今日は2020年3月25日。本当なら卒業式が行われるはずでした。でも、COVID19対策でキャンセルになっちゃったんです。卒業する学生たちがかわいそうです。
卒業式は仕方ないとしても、先日開始した対策がチンプンカンプンです。上層部がアホなのか…。なので、ちょっと整理してみました。

対象者の分類とまとめ

大学の構成員を分類し、それぞれについて、特徴をまとめてたのが次の表です。

分類予想される感染経路と問題点
学生学生間の交流/通学/プライベート時の行動
多くの学生が電車やバスを使って通学している。大学外の活動が比較的活発。外出を控えるように申し渡すなどしないと、いかなる対策も無意味になる。"
教員研究室内での交流/講義/会議/通勤
研究室内はいかなる対策をしようとも濃厚接触になっている。教員間あるいは職員との接触は主に会議。会議は稀なので、教員間の感染はほとんど無視できる。学会活動等での出張が多い。電車・バス通勤の比率は比較的低い。
研究室家族並みの濃厚接触であるが、逆に言うと、研究室メンバーに感染者が出た場合、当該研究室は則閉鎖という対応しかない。
職員会議/通勤
セクション間の交流が比較的多いため、感染者が出た場合の影響が広範囲に及ぶ可能性がある。
一般公共交通機関の乗客や保護者、買い物や余暇で訪れる市中の人々が想定される。
学生・教職員にとっては、余暇の規制・買い物等の規制、交通機関利用の規制が効果的。

感染防止対策のまとめ

感染防止を考える場合は、誰から誰への感染を防止するのかを明確にする必要があります。それをまとめたのが次の表です。

施策 概要 感染防止効果
学生間学生/教員研究室内学生/一般教員/一般職員
入学式中止学生間および保護者間の感染防止にはなる。教員のほとんどは不参加。ただし、その後の講義等で、学生間の感染が進行する。 ×××
講義延期学生間の接触は押さえられるが、いつまでも講義を延期することは現実的ではない。教員と学生の接触は限定的なのでもともと効果は少ない。休暇中の学生の行動によっては、感染防止効果が失われる×××
研究室活動の自粛研究室内での感染は押さえられる。しかし、研究室メンバーはもともと濃厚接触者(家族と同等)なので、学生等に感染者が発生した場合、研究室は2週間の完全閉鎖になる。研究室の学生が通学時に感染することは避けられる。××××
出張禁止教職員(および研究室の学生)の学外での感染防止に効果がある。多くの学会活動や一般企業での出張はすでに停止しているので、実質的なデメリットはほとんどない××
教職員の出勤自粛研究室は実質的に閉鎖となり、研究室活動の自粛と同じ効果が得られる。さらに、教職員の通勤時の感染が避けられる。通勤に電車やバスを利用する教職員は基本的にリモートワークとし、その他の教職員で、出勤しなければできない仕事を分担するなどの措置により、デメリットを低減できる。週1~2回程度を出勤の上限とするなどが考えらる。×
大学の閉鎖施設維持に必要な人員をのこして、2週間~1か月、大学構内への出入りを強く制限する。デメリットも多いが、効果は絶大。全員が自宅待機を守れれば、大学内の感染を完全に停止することができる。逆に閉鎖中の教職員・学生の行動を規制しないと効果が失われる。また、市中感染が深刻化した場合は、効果が一時的なものにならざるを得ない。
行動記録の提出プライベートも含めて、行動記録の提出を義務付ける。様々な活動自粛時に、自宅待機しないと効果が激減するので、それを防止し、緊急時に行動追跡できるようにする措置。プライバシーの問題がある。グーグルマップのタイムライン機能を使えば、比較的容易に追跡記録が作成できる。
Web講義講義を動画配信する。学生に関連する感染は防止できる。学生の感染防止には効果があるので、研究室内での感染も間接的に防止できる。デメリットは、学習効果を上げるには工夫が必要であると、準備が大変だということ、インフラが整っていないこと。学生のIT環境が整備できていないことも重大で、それには費用的な手当てが必要だし、機材をそろえるには1か月以上必要と思われる。また、Web講義により、文部科学省の単位認定条件をクリアできるかという問題もある。これは文科省から大量の予算をもらうべき。演習や実験科目をどうするかという問題が残る。××

デメリットの少ない対策から順次適用すべき

最終手段は大学の閉鎖であることは間違いないが、それは劇薬すぎます。当然、費用対効果、この場合は、デメリット対効果を考えた時に効率の良い対策から行うべきです。

入学式の中止は、デメリットは少ないですが、効果も一時的です。

次にデメリットが少ないのは、出張禁止です。大学教員の出張というのは概ね学会がらみです。学会そのものもありますが、学会関係の会議が多いです。実のところ、学会関係の会議は、現在ほとんどメール会議になっていますので、出張はすごく少なくなっています。また、多くの企業は出張を禁止しています。その影響もあり、今後、学会が行われない可能性も高いのです。ということで、出張禁止にしても実害はほとんどありません。
一律に出張禁止すると、規則を破らないと出張できなくなりますし、出張費が自腹になる可能性もあります。そうすると、よっぽどのことがない限り、出張しなくなりますよね。

行動記録の提出もデメリットはあまりありません。感染は仕事中だけでなくプライベートでの起こり得ます。なので、仕事上の制限をいくら厳しくしても、プライベートでの行動がハイリスクなら、効果は期待できません。なので、ある程度プライベートを規制する必要があるのです。実際に規制すると人権問題になりかねませんので、できれば、精神的に規制する形が望ましいでしょう。行動記録の提出を求められる可能性があると思うと、無理して人混みに出かけると、後でバレて大変なことになりますから、心理的にハードルが高くなります。

もし可能なら、Web講義を導入するのが良いのですが、準備が大変です。一部の講義は作り直しを余儀なくされます。特に、学生のプライベートでのIT環境が整っているかどうかというのが問題になります。学生によっては、スマホのみという場合もあり、講義を数回視聴するだけで、通信制限を食らう可能性もあります。

〇×表を見ると、効果があまり期待できない対策の筆頭が、研究室活動の自粛です。費用対効果という点ではおそらく最悪の部類になります。そして、なぜかうちの大学はこれを始めてしまったのです。訳が分かりません。