緊急事態宣言が延長
2020年5月4日、緊急事態宣言が5月31日まで延長になりました。皆の頭に去来するのは、こんな状態がいつまで続くのか?ということだと思います。
そもそも、疫病が終息するのには2種類しかありません。
(1)特効薬等や隔離の徹底により、病気を根絶する。
(2)ワクチンや感染の飽和により、集団免疫を獲得する。
結核などはペニシリンなどの特効薬により、病気を根絶してきました。一方、インフルエンザや通常の風邪(コロナを含む)の場合は、集団免疫により流行が終息します。
病気の程度が軽い場合は、全員が感染して集団免疫を獲得する方法が一般的です。病気の危険性や薬・医療費というコスト面で有利だからです。
一報、病気が重い場合は、高コストな薬や隔離療養を採用してでも、病気を根絶する必要があります。特に、死亡率が10%以上になるような場合は、選択の余地がありません。
人類は大変な努力をして、いくつかの致命的な感染症を克服してきました。その中には、狂犬病のように、家畜などへのワクチン接種という、びっくりするくらい高コストな方法すら採用してきました。何と言っても、狂犬病の致死率は90%くらいあるそうですからね。あのエボラやペストでさえ、50%前後。狂犬病がいかに恐ろしく、人類がナーバスになっているか、という話です。
SARSの時は致死率が10%程度で、大変なパニックになりましたが、完全隔離により根絶に至りました。MERSはさらに高くて致死率40%です。こちらは隔離は進んでいるものの、完全な根絶に至っていません。
豚インフルエンザは、致死率が0.5%もなくて、最終的に全人類が罹患して集団免疫獲得により、終息しました。ま、インフルエンザってのはもともと豚を経由しているっていう説があって、パニックになるほどではない、ということだったのかもしれません。
COVID19はどのようにして終息するか?
現段階で、COVID19は収束の兆しを見せていると考えれています。そのため、多くの国々で経済活動・市民活動の再開が検討されています。
ただ、僕たち日本人が知っておかねばならないのは、海外が言うところの経済活動再開とは、現在の日本程度の経済活動を目指す、程度の話だということです。
日本では諸外国のようなヒステリックな社会統制政策は行われていません。スーパーは営業しているし、流通も普段通りです。公共交通も動いています。レストランも昼間は営業しています。外出は自由です。移動制限もありません。
もちろん、学校は休校しているし、旅行するひとはほとんどいません。でも、散歩すると逮捕されるなんてことはありません。むしろ、健康維持のために散歩するべき、という話になっています。
海外ではCOVID19終息の兆しとして象徴的に報道される「スーパーが再開」が、日本ではニュースなったりしません。だって、日本のスーパーはずっと営業しているんですからね。再開しようがないのです。
日本はCOVID19の終息という点では世界の最先端なのです。
一足早くに終息宣言をだした中国は、完全な隔離により病気を根絶する、という戦略を取り、比較的短期に病気を克服しました。経済活動や市民活動の再開が大々的に報じられています。リーマンショック時のようにこのまま中国経済をけん引し、景気を下支えするという楽観的見通しもあるかもしれません。でもそれは否定的です。いまや経済はグローバル化しており、サプライチェーンが複雑化しています。中国国内でサプライチェーンを維持することは実質的に不可能だし、サプライチェーンを克服したとしても、売り先(マーケット)が中国国内にあるとは限りません。
現在の中国では、感染爆発は行らないものの、ごく少数のCOVID19患者が、海外からの渡航者の中に見つかっています。渡航者の厳密な隔離により、市中感染を防げていますが、裏を返せば、渡航者経由で感染が国内に持ち込まれた場合、感染爆発の危険性を排除できていない、と言えます。特効薬がないので、短期に病気を抑え込めないし、早期診断も方法がないので、長い潜伏期間のために潜在的な感染者の特定が原理的にできません。なので、人や物の国際的な移動が活発化すると、中国では再びCOVID19が蔓延します。
COVID19後の状態を考えた時、鎖国するなら中国のように抑え込むのは良いですが、そうでないなら、中国ような方法は採用するべきではありません。あるいは、ワクチンがいきわたるまで鎖国すると決意するなら、それはそれでよいと思いますけどね。来年の今頃、ワクチンが使えるようになったとして、ワクチンがいきわたるにはさらに1年くらいかかります。2年間鎖国するなら、それでもよいでしょう。
日本の政策はけっこうゆるゆるで、COVID19を本格的に抑え込もうとしていないように見えまず。実際のところ、中国のように無理やり抑え込もうとしてないと思います。日本の基本戦略は、集団免疫の獲得だと思います。
そもそも、COVID19は新しい病気ですから、特効薬はありません。だから、力ずくで病気を制圧するには、隔離政策しかありません。歴史的に、日本はいくつかの病気で隔離政策をおこなってきましたが、ことごとく不幸な結末を迎えています。それもあって、隔離政策には及び腰なのだと思います。それは悪くないことだと思います。とすると、病気を根絶することは困難だという結論になります。ということで、必然的に目指すのは集団免疫です。
COVID19は新しい病気なのでワクチンはありません。ワクチンのない病気にたいして集団免疫を獲得するには、大多数の人が感染を経験し、免疫保持者が50%を超える必要があります。しかしながら、COVID19はまあまあ致死率が高く、10%近くの人がICUの小瀬あになります。日本はICUの数が先進国中でワーストクラスですから、気を抜くとICU不足になります。イタリアの例をみますと、ICUが不足した場合、致死率が10%近くになります。とすると、SARS並みとなり、徹底的な隔離が必要になり、集団免疫を戦略が破綻します。
イギリスは最終的に集団免疫を目指すわけですが、それを発表したとたん、医療崩壊(ICU不足)に至り、致死率が上昇し、強い隔離政策に追い込まれました。すると、致死率が下がったので、再び集団免疫を目指しているというのが現在の状態です。再び医療崩壊に至らないように、どのくらいの行動制限だと医療崩壊しないのか、おっかなびっくり探っているというのがヨーロッパの状態です。
我が国のポリシー
日本の政府は信用ならないわけですが、専門家たちはこっそりと、感染爆発させないように国民を感染させてゆく、という戦略を議論していると思われます。
1年以内の終息を目指すなら、ワクチンに期待するのはムリです。専門家の中には2年程度での終息を予想している人もいますが、その根拠はワクチンがいきわたる時期です。集団免疫の獲得をワクチンに頼るなら、2年必要なわけです。
東京オリンピックもありますから、それは許容できません。1年以内の終息を目指すなら、国民の大半を感染させるという方法でしか集団免疫は得られません。その際、医療崩壊するとまずいので、医療崩壊しない程度に感染を蔓延させる、という非常にきわどい方法を取らざるを得ません。
医療崩壊はICUの不足で生じるということがわかっていますから、ICUの数から逆算して感染者の数をコントロールすれば、良いわけです。そのためには、本当に危ない患者だけをCOVID19とするだけで十分です。軽症であったり無症状であったりする人たちが病院に滞在すると医療崩壊が近くなりますから、それを避けたいわけです。どうするかということで考え出されたのが、発熱4日ルールの徹底です。
一般の風邪では薬は3日程度しか処方されません。その理由は、たいていの風邪は発熱から4日以内に治癒するからです。市中の医療機関での診察では、重篤な病気の兆候を見つけ出すことがミッションとされています。そのために、100項目以上とも言われるチェックを医師は瞬時に行っていると言われています。そのチェックは病院に入った瞬間から始まっており、待合室での会話すら、診察の対象となっています。
すべての項目をパスした患者は「風邪」と診断され、症状に応じた定型パターンの薬が処方されます。その際の処方日数はたいてい3日~7日です。7日の場合は「念のために」抗生物質が処方されています。ただ、それも「念のため」でしかありません。検査のコストが薬価よりはるかに高いので、検査せずに薬を処方するのです。
ここからわかるのは、4日以内で治るような発熱は軽い風邪であって、COVID19ではありえない、という臨床での経験があるからです。だからこその4日なのです。そして、その中には軽症のCOVID19も少なからず混じっています。しかし、それらは重篤化しないので、COVID19 であったとしても治療や隔離の対象とする必要はない、という判断があるのだと思います。あるいは、軽症にとどまるCOVID19の変異体が広まるのはむしろウェルカムと思っているのかもしれません。
ICUのベッド数から逆算すると、おそらく感染者が2万人くらいいるじょうたいが適正です。診断がついてから退院するまでの日数をおよそ2週間とすると、一日の感染者数が1400人くらいまでなら耐えることができます。ただこれは全国まんべんなく感染者が出て、全国まんべんなくICUがある場合であり、実際の許容量は1000人を切る必要があるでしょう。そして、気を抜くと感染爆発しちゃうので、余裕が必要です。なので、一日の感染者数が500人くらいなら、パニックは決して生じないだろうという概算かもしれません。
そういえば、1日の感染者数が500人くらいまでで耐えてましたよね。
ただ、こんなにちんたらした感染者数だと5000万人がかんせんするのに50万日=1500年くらいかかります。目がくらみます。でも朗報があります。症状のない不顕性感染がかなりいるということが抗体検査によってわかってきています。我が国においても10%近い人に免疫があるかもしれない、という話が出てきています。本格的に流行して2か月くらいしか経ってませんから、今の状態を3か月くらい続けたら、もしかしたら集団免疫が効くくらいになるかもしれません。
そのためには、一気に終息に向かうのではなく、現状維持をうまく目指す、というのが本音なんだと思います。
でも、僕は持病があるので、致死率10%です。感染は避けねばなりません。